新橋の街は閑散としていた。
街ゆく人は皆口元を隠し、どこか収まり所の悪い表情を浮かべている。
このなんとも言えない心の中のざわつきは、もしかしたら私だけが抱く感情ではないのかもしれない。
皆がそれぞれ心のどこかで、このなんとも言えないもどかしい思いを抱えているのかもしれない。
お店を探す。
今回目的の纏さんは入り口が分かりにくいことで有名だ。
案の定、地図アプリを見ただけでは生粋の方向オンチの私には到底到達できそうもなかった。
食べログで外観を調べる。
お店は家と家の狭い隙間のような路地の奥にあるようだ。
地図をもう一度確認。
するとパチンコ屋さんの裏にあるようだ。
臨時休業しているパチンコ屋さんの裏に回る。
店外には喫煙スペース建設中の文字が。
こんな場所でも、あの日から時間がピタリと止まってしまっているようだった。
いつ動き出すかもわからない時間に想いを馳せているとお店の立て看板を発見。
そして細い路地裏の奥にお店を発見。
お店は幸い空いているようなので入店。
こちらの新橋纏さんでは平子煮干しを使った醤油ラーメンが定番のようだが、私はかねてより気になっていた「烏賊干鶏白湯そば」の特製をチョイス。
店内で流れるラジオでは聞き馴染みのある内容が繰り返し流れ続けている。
大判な鶏チャーシューが目を見張るブラウンのスープが美しい一杯。
匂いは思ったより普通の鶏白湯。
動物臭さはもちろん、もっと烏賊って臭うのかと思ったが、めちゃくちゃいい匂い。
出汁のいい匂い。期待が高まる。
早速スープを一口。
うをおん!う、うまいぞ!
味わいはとても円やか。クリーミーな鶏ポタージュスープのようなしっかりとした旨味。
その後に魚介の嫌味のない優しい旨味が押し寄せる。これが烏賊の出汁。とても新鮮。
普通魚介系は旨味が強い分、どことなく、癖や臭いがあったりして(その癖が良かったりもする)好みが分かれる部分ではあると思うが、こちらの烏賊干の出汁はストレートに魚介の旨味を堪能できる。
あー、これは美味いな。
麺もシンプルなストレート麺ですが、小麦感が強く、非常にスープとマッチしています。
麺とスープの美味さをガツンと感じられます。
大判な鶏チャーシューも臭みもほとんどなく、スープに浸して頂くとGOOD。
唯一トッピングの烏賊下足は少し烏賊の臭みの主張が強く私的にはいらなかったかなー。
ただ、烏賊らしさをかなり演出していたのは確か。
やはり、良いところだけではなく、嫌なところも好きにならないといけないのですね。
恋愛と一緒ですね。わかりますよ。えぇ。私にだってね。わかりますよ。えぇ。それくらいは。
ふー。
さっきより塩っぱくなったスープをグビッ。
改めて、こちらのスープの美味しさを再確認して本日も完食です。
烏賊干を使った珍しい鶏白湯ラーメンでしたが、誰からも愛されるような非常に食べやすく、美味しい一杯でした。
ごちそう様でした!
また落ち着いたらゆっくり食べにきます。