☆プロローグ
雲一つない冬の空の下私は後に悔やむことがはばかられるほどの後悔をしていた。
1月の中旬のこの寒い時期にヒートテック一枚にアウターという格好で遠出をしてしまったのだ。
アウターの下はヒートテック一枚。もちろん中身はスカスカで風が吹くたびに冷たい風が体の中を循環してすぐに私の体温を奪う。
そのことに気付いたのは電車を降りてからのこと。
時すでにお寿司とはこのことで私にもう後戻りするという選択肢はない。
用事を済ませ、早くあったかい我が家に帰還しなくては。
といってもまだその用事まで時間がある。
知らない土地で時間が空くということは、それすなわち美味しいお店を調べて食べにいくという義務がある。
早速調べるとどうやら八王子には八王子ラーメンと言われるものがあるらしい。
連れにそのことを話したら
八王子を背負いきれる程美味しいのかはなはだ疑問だ。
と訳の分からんことを言っていたが確かに気にはなったので早速検索。
いくつかの候補の中から私は駅から割とすぐ近くにある「タンタン」に向かうことにした。
八王子の町は駅近は栄えているものの、少し離れると住宅街が広がっている。
東京はどこもゴミゴミしたところが多い気がするが八王子は集散のバランスが非常に良い。
活気のあるところは程よく活気があり、静かなところは実に程よい静けさがある。
そんなことを考えていると数人の行列が目につく。
あそこが間違いなく「タンタン」だろう。
平日昼間の11時過ぎ。
開店時間とほぼ同時に訪れたが、すでに店内は満席。
外には5.6人の待ち客。
人気店でありながらもアホみたいに長時間並ぶことがない。そういうところも食べ歩きには重要なポイントでもある。
ここはお店の人気と店の回転率のバランスがちょうど良いのだろう。
外のメニュー表を見るとメニューは実にシンプル。
通常のラーメン、チャーシュー麺のバラ、ロースをそれぞれ並、大、特で量を調整できる。
また、麺の硬さ、味の濃さ、脂の量、玉ねぎ多めなどの微調整も行ってくれるらしい。
これは色々試したいなーと思っていると私は店内ぬ案内された。
店内はカウンターのみで10席ほど。かなり密集感のある店内である。
早速私はセルフの水をコップに注ぐと
チャーシュー麺(ロース)の麺硬めをオーダー。
女性店員さん3人で切り盛りする店内は昔の中華屋さんの雰囲気ながらもどこか清潔感を残している。
卓上にニンニクと辛味噌の存在を確認していると、ラーメンはすぐに私の目の前に現れた。
私の大好きなシンプルに美味しいそのビジュアルは私の口角をあげるのに苦労を要さない代物だった。
★味の感想
チャーシュー麺(ロース) 750円
麺硬め
まずはスープを一口。
うーわ。もうこれ最高のやつやん。
僕の中に直球ど真ん中に突き刺さる正統派醤油スープは豚の旨味が最高の激ウマスープ!!
スープ自体が豚出汁なのか、あまりにも多いチャーシューの旨味が溶け出しているのかわからないがとにかく豚の上質な甘みがストレートに味わえる。
醤油はキリッと系というよりかはじんわり浸透する感じの優しい口当たり。
これがめちゃくちゃスープを飲みやすくしている。
おそらくけっこう塩分は強めなのだろうが、それを全く感じさせない最高のスープの仕上がりです。
真ん中に乗っている八王子ラーメンといえばの玉ねぎを溶かして麺をすすります!
麺もいい感じですねー!
少しねっとりした歯ごたえの昔ながらの中華麺といった感じでしょうか!
なるほどこれは確かに麺柔らか目を頼む人が多いのもわかります。
この麺だと硬めよりも柔らか目の方がスープとの相性も良さそうです。
そしてお次はチャーシュー!
これもまたうまい!僕はロースの方を頼んだんですが、食べごたえばっちりの肉質しっかり系チャーシューが4枚ほど。
めちゃくちゃボリューミーでコスパの高さに驚きました!
ロースだからかわかりませんがほんの少し厚めにカットされているため肉を食っている感じがベスト!
ロースはほとんど脂身がなかったので、チャーシューの脂身が苦手という方もバクバクいけるチャーシューです!
これは女性店員さんだからこそなせる技なのかもしれません。総じて見ると豚出汁のスープにチャーシューといったこういうビジュアルのラーメンで多少の豚臭さがありそれも含めて美味しいみたいなお店が多いです。
でもこのお店は全くそんなの感じなかった。ラーメン自体もそうですし、店内も店外もラーメン屋くさいと感じることがありませんでした。
でもそんなことは無視して後半から大量のニンニクを投入。(笑)
当たり前ですが、こういう系のスープにニンニク抜群に合うんで入れても支障の無い方は是非入れちゃってください。
ということでこんな美味しいラーメンを750円で食べれるのは本当にやばいです。
是非みなさんも行ってみてください!
大大満足でした!
ごちそう様です!
☆エピローグ
食べたもののクオリティとお釣りの多さが全く釣り合っていなかった。
こういうコスパの良いものを食べてしまうと少し平均のコスパに慣れるまで時間がかかる。
良いお店を訪れると起きる嬉しい弊害だ。
あのバランスのとれたスープはまさに絶品だった。量も腹八分目ほどに抑えられたちょうど良さ。
ふと私は
あー、町もラーメンも結局はバランスが大事なんだなー
と思ってしまった。
一人だからこんなしょーもないことを考えることを許してほしい。美味しいものを食べると人は総じていい意味でのセンチメンタルな感情に襲われる。
私はこの幸福が無くならないうちにあたたかい我が家に帰るべく八王子駅の方へ向かったのだった。